買う前と買った後。

先日、空冷ポルシェを探している方と食事した時にある相談を受けました。その内容は「ずっと空冷を探しているのだが、良い個体が見つからない。年齢的にもこれ以上は待てないので違う車種を探したい。」との事でした。こちらの方は以前に「これだ！」と言う固体をご紹介したのですが「もっと良いのがあるかも？」と言う考えが浮かんしまったおかげでその固体を逃し、１０年近く探し続けていました。もちろん１０年の間に空冷ポルシェは相場が上がっていますし、どんどん程度の良い個体は減って行きます。それでも「いつかは良い個体の話をもらえる！」と私を信用してお待ち下さったのですが、やはり相場と固体の減少から以前を超える固体のご紹介は出来ないままでした。「なかなかご希望に合うモノをご紹介出来ずにすいません。しかし、ここまで待たれたのに突然の心変わりされるのが意外だったのですが、何か理由がおありなんですか？」と聞いたところ、数日前にかなりショックな出来事があり、その出来事のおかげで違う車種を考えるようになったとの事。その日、その方は現在所有されている愛車でドライブに行っていたそうです。いつものコースを楽しみ、自宅に帰っている最中の信号待ちで事件は起きました。何とクラッチを踏む左足が突然痙攣してしまったそうです！ちょうど近くにあったコンビニの駐車場に車を停めて、休憩とマッサージをしていたら治ったそうですが、突然だったのでかなり焦ったそうです。「オレももうすぐ５０だし、若いつもりでも体力落ちてるんだろうね・・・このまま待ち続けても、相場や状況的に納得出来る個体が出て来る保証も無いし、スポーツカーを楽しめなくなってから買っても遅いから、楽しめるうちに違う車を楽しむよ。」とおっしゃっていました。私が「確かにそれも車を楽しむ１つの道ですが、本当に良いのですか？ぶっちゃけ鍛えればどうにでもなりますよ？当方の知り合いのフェラーリ、ランボルギーニオーナーで６０歳オーバーの方も珍しくないですよ？」と言ったら「もし前紹介された車を買って、既に楽しさを味わえている状態だったら『このまま乗り続けたい！』って言う気持ちから、鍛えるためのモチベーションも上がるんだろうけど、今の忙しい状態でまだ見ぬ車のためのトレーニングは厳しと思う。って言うか違う車種の方が早く契約になるのに、いつ見つかるかも解らない車を引きとめようとするぴんぽるさんもおかしな人だな。」と笑ってました。苦渋の決断をされた方をこれ以上引き止めるのは無粋と思いましたので、新しい車の条件をお聞きして帰りました。年月が経つと人間は年を取りますし、自身の置かれている環境も変化します。「当初は５００万円だった予算が、子供の進学の関係で３００万円にしなければならなくなった。」と言う話も多々あります。極端な話「最初は奥さんが４００万円までは許可してくれたんだけど、やっぱり３００万円までしかダメと言われた。」等、本当に些細な事で予算が変わるケースもあるのです。体力にも同じ事が言えます。年を取ると、体力の減少以外にも病気等の可能性も出て来ます。今回の方もおっしゃっていましたが「愛車を乗り続けたいからトレーニングを頑張る。」と言う方も結構いるのです。以前にフェラーリ・Ｆ３５５を紹介させて頂いた方がいらっしゃいましたが、この方は非常に興味深い変化を遂げてらっしゃいました。購入された時は結構ぽっちゃりした体型だったのですが、最初のオイル交換に来られた時には見違えるようにスリムな体型になっていました。理由を聞くと「せっかくカッコイイ車に乗るんだから、それに似合う男になりたい！」と思い、ダイエットに励んだとの事。「今までダイエットに成功した事がなかったんだけど、フェラーリのおかげで痩せられた！ダイエットにはフェラーリだね！」とちょっと語弊のある事を言っていましたが、車好きに限れば正解かもしれません。「買うために頑張る。」と「買ったから頑張る。」のどちらが強いかは人によって違うのでしょうが、ちょっと色々と考えさせられる日でした。